06/19/2005
江戸もの
ついでなので、ここ数ヶ月で読んだ江戸時代ものの紹介(西鶴だけでもあれだし)。
『江戸と大阪』、幸田成友、冨山房百科文庫:
大正13年に東京商科大学で行われた講義をもとに書き起こされた本。1942年に発行された本が(1995年の復刻とはいえ)新刊で買えるという事実もすごいが、中身はもっとすごい。江戸時代の行政、経済の詳しい解説なのだ。江戸時代の社会の仕組みというのはなかなか分かりにくいのだが、幸田成友は幕臣(河内山なんかと同じ表坊主)の家の子孫だけに空気というものがよくわかっていて、史料も博覧強記、しかもそれを現代の我々にも理解できる言葉で語ってくれる。
色々とイマジネーションも膨らんでいく感じで、沢山の人に愛読されてきたという感じが伝わってくる。読んでいて、「あ、これはあの小説の元ネタ」「あ、これはあの歴史本の」という瞬間が幾度もあった。
『増補 幕末百話』、篠田鉱造、岩波文庫:
こちらは、明治半ばのころ、すでに古老になっていた江戸時代を知る人々にインタビューしたのを集めたもの。
内容もさることながら、素敵なのはその語り口で、江戸っ子っていうのはこういう喋り方をしたのか、と思わされる(その一例は下に引用)。この本も色々なもののネタになっているらしく、「お、これはあの短編の」というのにちょくちょく出会った。
「ソコへ大札がツカツカと入って、『奴、手前のために顔が潰ったぞ』と言うより早いか、かの鯵切り庖刀でグサと鈴木屋の横腹へ文部大臣を極込んじゃったんで、ワッというその場の騒ぎ、これを大くした日にゃア芝居に幕を打たねばならぬ。ソコに居合わせた権十郎(今の成田屋の十二、三歳の頃)の男衆で、大師亀というのが背後から忠臣蔵の本蔵を極める。突れた鈴木屋は茶屋がスグ芝居の前だから、抱いて二階へ連込み、血はズウと筋を引くという始末、大札は番所へ縛れたんです」(p54)
『幕末気分』、野口武彦、講談社文庫:
幕末シリーズ。こちらは最近の。野口さんの作ということで、当然捨てがたい味がある。史料も切り口も面白い。しかし、黒鉄ヒロシに表紙を書かせたのは失敗(あるいは黒鉄さんが絵を失敗)。不必要に軽い感じになっていると思う。版組みも何かがおかしい。
『絵で見る幕末日本』、エメェ・アンベール、茂森唯士訳、講談社学術文庫:
絵がきれい。観察眼も素晴らしい。ただ、フランス語原著のロシア語版を駐モスクワ日本大使館の職員が訳したという極道な展開のため、なんだかよく分からないことになっているところが時々ある。もっとも、目に見えてひどい所があるかというと、そうでもない。要するに最初から事情を分かって読む必要があるということだ。それに、絵の素晴らしさには疑問の余地がない。
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