« 意外と変じゃない | トップページ | 青い明神、監督コメント »
01/24/2006
スラムオンライン
今年の一発目。諸般の事情で、あまり娯楽系の本を読んでなかった。
表紙はイマイチだし、ネタはとっつきが悪い。ストーリーはどちらかと言うと平凡だ。でも面白い。
僕は若いころ、5分ほどだが作家になろうかと本気で考えた。そのせいかどうか、未だに日本人が書いた小説をほめるのに抵抗がある。まして、若い奴ならなおさらだ。
こいつ、日本人。数歳年下。
面白い。薦める。説明はしない。ちょっと心が動くようだったら、読め。
というところで一度は終わろうと思ったのだけど、それじゃあんまりなので、少し。
桜坂の上手いところは、たとえばSEの使い方だ。いや、効果音の書き方ではなくてSEという言葉の使い方。以下の部分をみてもらいたい。
ビヤホールを出たあと、飲み足りないと主張する小数のメンバーと別れ、ぼくはJR新宿駅へと歩いた。新宿の街はさまざまな音で満ちていた。
人の群れがアスファルトを踏みしめるSE。
ネオン管の電流がはじけるSE。
出どころのわからない笑い声と叫び声と妙に明るいキャッチセールスの声が、渾然一体となってひとつのSEと化していた。(p61)
もちろん、これはごくありきたりな盛り場の描写にすぎない。だが、ここでの言葉の使い方が、後になって効いてくる。
実は、作中のかなりの部分はネットゲームの描写に使われる。これは難しいところで、あまりきちんと描写すると一般の(あまりゲームなどに馴染みのない)読者が引いてしまうし、かといって一般に迎合して専門用語を排除するとリアリティが失われる。だが、上のような部分があることによって、たとえば、
道をふさぐ赤茶色の円筒に軽く蹴りを入れた。
ごん、というSE。
どうやら、ドラム缶のようだった。
その他にも、鉄パイプやら灯油缶やら漬けもの石やらなんだかよくわからないものやら、ポリゴンを無駄遣いした物体がたくさん転がっている。(pp.80-81)
という描写が不自然に見えないのだ。こういうのを見ると、ああ、プロの技だなあと思う。そして安心するのだ。この人になら、自分の魂を1時間ばかり預けてもいい、と。
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1077/8322721
この記事へのトラックバック一覧です: スラムオンライン:



